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大腸がんは大腸の内腔から発生した悪性腫瘍の総称で、そのほとんどは大腸粘膜の腺細胞から発生し、腺がんと呼ばれています。がんは発がん遺伝子の出現と、がんを抑制する遺伝子のバランスの乱れによって発生するとされ、大腸がんの発生、進展にはさまざまな遺伝子異常が関わっていると考えられています。
大腸がん(結腸・直腸・肛門がん)の罹患(りかん)率は、50歳代付近から増加し始め、高齢になるほど高くなります。また、大腸がんの罹患率、死亡率はともに男性のほうが女性の約2倍と高く、特に、直腸がんは男女差が大きい傾向があります。現在日本では大腸がんは増加傾向にあります.主として結腸がんの増加が影響しています。大腸粘膜のあるところではどこからでもがんができますが、日本人ではS状結腸がんが全大腸がんの27.6%と一番多く、その次に直腸がんが26.6%、さらに上行結腸がんが20%と続いています。
大腸がんの発生には遺伝的要因によるものと、食生活などによる環境因子によるものが関係していると考えられています。直系の親族に同じ病気の人がいるという家族歴は、大腸がんの危険要因になります。特に、家族性大腸腺腫症と遺伝性非ポリポーシス性大腸がんという疾患の人がいる家系は、大腸がんの危険要因とされています。また環境因子については、生活習慣や食生活の欧米化が考えられています。過体重と肥満で結腸がん発生の可能性が高くなります。また、飲酒や加工肉は、大腸がんの危険要因とされています。またたばこも大腸がんの発生率を上昇させる可能性があります。

大腸がんの予防には大腸がんの発生を予防する一次予防と、早期発見、早期治療によって大腸がんによる死亡を防止する二次予防とがあります。一次予防は、偏食をなくし動物性の高脂肪食に頼らず、野菜を多く摂取することでがんの予防につながることがわかってきております。さらに運動は結腸がんの予防効果が確実とされています。また果物も、大腸がん予防の可能性があるとされています。


二次予防としては、便潜血反応検査を中心とした検診があげられます。検診を行うことにより、大腸がんの前がん病変といわれる腺腫や早期大腸がんの状態で発見、治療に努めることが大切です。

大腸がんの治療は手術療法が基本で、早期がんの場合でも手術が必要になる場合があります。手術の原則はがんの存在する腸管とその周囲のリンパ節を取り除き(切除)、つなぎなおすこと(吻合)です。
大腸がんに対する腹腔鏡下手術は1990年代前半から国内でも行われるようになり、腹腔鏡下手術を施行する施設は徐々に増えてきています。当教室においても大腸がんに対して、積極的に腹腔鏡下手術を導入しています。2012年度の予定手術に占める鏡視下率は82.2%でした。
炭酸ガスで腹部を膨らませて、腹腔鏡(カメラ)を腹部の中に入れその画像を見ながら小さな孔から器具を入れて手術を行います。がんを摘出するために1ヶ所、4~6cmくらいの傷が必要です。手術時間は開腹手術より長めですが、小さな傷口で切除が可能ですので、術後の疼痛も少なく、術後5~7日前後で退院できるなど体に対する負担が少ない手術です。腹腔鏡下手術は近年開発された手術手技であり、特殊な技術・トレーニングを必要とし、外科医のだれもが安全に施行できるわけではありません。現在、腹腔鏡下手術の最大の問題は、どこの施設でも安全に腹腔鏡の手術が施行できるわけではないこと、すなわち大腸がんの腹腔鏡下手術の専門医が限られていることです。
当教室では日本内視鏡外科学会認定の内視鏡外科技術認定医が術者あるいは指導的立場として手術に加わり、大腸がんの腹腔鏡下手術を安全、確実に行う体制をとっております。
炭酸ガスで腹腔内をドーム状にふくらませます。 ポートという筒状の器具を4または5個挿入します。ここからカメラや腹腔鏡用の電気メス、臓器をつかむための器具、はさみなどを出し入れして手術を行います。
カメラに映し出される腹腔内の映像をモニターで見ながら手術を行います。開腹下に直視下に見るよりも血管や神経などがより鮮明に見えるという利点があります。最終的に臍を約3~4㎝切開し切除した大腸を摘出します。
臍の傷だけで行う腹腔鏡下手術のことです。胆嚢摘出術を中心に急速に広がってきており、当科でも大腸癌領域、特に右側結腸手術に単孔式腹腔鏡下手術を積極的に導入しております。
腹腔鏡下手術と違い,臍のまわりの孔の傷もなく、臍だけの傷しか残りませんので、ほとんど目立たなくなります。

クリニカルパス

飲食について

  • 入院するまでは食事に関して特に制限ははありません。
  • 手術の2日前までは基本的に普通食を食べていただきます。手術前日は夕食から食止めになります。手術前日の午後15時ごろに腸管洗浄液を飲んでいただきます。手術当日の朝に浣腸を行います。
  • 手術後2日目より飲水が始まります。3日目から食事(3分粥、5分粥、全粥とあがっていきます)が始まります。

術後塞栓(血栓)予防のための弾性ストッキングをはいていただきます。術後の肺炎や無気肺の予防目的に、コーチ2という呼吸訓練器具を購入していただき、入院後から積極的に呼吸訓練を行います。

手術後の離床について

術後早期の離床が早期の回復につながることがわかっております。手術当日は術後集中治療室(ICU)で経過観察になります。集中治療室ではベッド上安静になりますが、麻酔から醒めて覚醒している時はできるだけ深い深呼吸をすることを心がけてください。鼻から吸って口から吐くように呼吸しましょう。1時間に最低でも5回は行ないましょう。手術翌日からは最低8時間ベッドから離れて過ごすようがんばりましょう。看護師の介助、付き添いのもと、手術翌日から病棟フロアーを歩行していただきます。また、コーチ2による呼吸訓練も積極的に行っていただいています。立位、歩行、呼吸訓練は肺機能を高め、術後肺炎、無気肺予防にもなることがわかっています。できれば下着、衣類の着替えなどもやってみましょう。

術後痛みのコントロールについて

痛みを取り去ることは歩行、深呼吸、飲食、十分な睡眠などにとても大事な要素です。除痛のための方法として手術前に硬膜外麻酔(手術前に背中から管を挿入する)を行ないます。ただしこれだけでは完全に痛みをとることは困難ですので、作用機序の異なるお薬(内服薬の鎮痛薬)を併用します。硬膜外麻酔は術後48時間で終了となりますが、痛みがある場合はいつでも痛み止めを要求することができます。

カテーテル(チューブ類),輸液(点滴)について

基本的に、手術後に体についているチューブ類は手術中,ならびに手術後の尿排出、尿量のチェックのための尿カテーテルと点滴のための輸液用カテーテル,硬膜外麻酔のためのカテーテルの3本だけです.腹部にドレーンという管を挿入することもあります。尿カテーテルは全身麻酔後に挿入されますが、このカテーテルは手術翌日に抜去します。

点滴は食事の摂取量をみながら適時減らしていきます。硬膜外麻酔のカテーテルは術後48時間後に抜去します。

退院の目安について

術後第5~7日目に退院となります。

退院後の生活について

退院後に術後合併症が発生することはまれですが、まったくゼロではありません。ですからもし退院後に何か心配なことがありましたら、遠慮なくご連絡ください。

腹痛について

術後1週間は蠕動痛(腸の動きが亢進による痛み)が出現することがあります。この痛みは2~3分間続いた後消失するのが一般的です。この痛みは特に異常ではありません。
しかし、発熱を伴う激しい腹痛が何時間も持続する場合は縫合不全の可能性があります。縫合不全の発生率は一般に2~3%と少ないですが、発生すると、緊急手術、さらに重篤な状態になる可能性があります。ですから。2時間以上持続する激烈な腹痛がある場合、あるいは発熱、体の調子がすぐれないなどの症状がある場合はすぐに病棟もしくは外科外来に連絡してください。

おなかの傷について

術後1~2週間は傷がやや赤い、あるいは違和感がある(つっぱる,硬い)ということがありますが特に心配はいりません。しかしもし以下のようなことがみられましたらただちに連絡ください。 おなかの傷について

腸の機能について

手術後、腸の習慣に変化があるかもしれません(便秘傾向になったり、下痢気味になったり)。術後特に飲食に関する制限はありません。術後2週間は、1日3食もしくはそれ以上の回数で、適切な量の飲食をこころがけてください。また適度な散歩も心がけましょう。もし3~4日便が出ない場合は当科より処方された緩下剤を内服してください。もし1日に3回以上の軟便がでるようでしたら一度ご連絡ください。

運動について

手術後1日目から積極的に体を動かしてください。もとの体力にもどるのに約1ヶ月かかるといわれております。特に運動について制限はありませんが。術後6週間までは重いものを持つのはさけてください。加えてジョギングや水泳などは術後2週間後に徐々に開始してください。傷がおもわしくない場合は運動は控えてください。

仕事について

ほとんどの方が術後2~4周で仕事に復帰できます。もし重労働の仕事の場合、術後6週までは無理をしないでください。

運転について

運転は自信をもって安全に運転できると確信がつくまでは控えたほうがよいでしょう。一般に術後2~4週は運転しないようにしましょう。

趣味について

制限はありません。むしろ積極的におこなってください。術後回復に効果的です。

大腸がんの化学療法は、進行がんの手術後に再発予防を目的とした補助化学療法と、根治目的の手術が不可能な進行がんまたは再発がんに対する生存期間の延長及びQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の向上を目的とした化学療法とがあります。大腸がんに対して有効かつ現時点で国内にて承認されている抗がん剤は、フルオロウラシル(5-FU)+ロイコボリン(国内ではアイソボリン)、イリノテカン(CPT-11)、オキサリプラチン、UFT/LV、UFT、S-1、カぺシタビン(ゼローダ)などです。
  • 術後補助化学療法

    手術によりがんを切除できた場合でも、リンパ節転移があった場合に、再発率が高くなることが知られています。このような場合、手術を行った後に化学療法を行うことで、再発を予防するあるいは再発までの期間を延長できることがわかっています。このような治療を、術後補助化学療法といいます。一般には、術後補助化学療法の対象は一部のステージII期の患者さんとリンパ節転移があるステージIII期の患者さんで、手術後に5-FU/ロイコボリン療法の6ヶ月投与、あるいはゼローダの6ヶ月投与が標準的に行われています。リンパ節転移のないステージI期の患者さんについて術後補助化学療法の有用性は明らかではないため、基本的には術後補助化学療法は行わず、無治療で経過観察をします。

  • 進行再発大腸がんの化学療法

    根治的な手術が不可能な場合には、化学療法の適応になります。大腸がんの場合、化学療法のみで完治することはまれですが、臓器機能が保たれている人では、化学療法を行わない場合と比較して、化学療法を行ったほうが、生存期間を延長させることがわかっています。抗がん剤というと、副作用が強く、治療を行ったほうが命を縮めてしまうと考えてしまうかもしれませんが、最近は副作用の比較的少ない抗がん剤の開発と、副作用対策の進歩により、入院せずに外来通院で日常生活を送りながら化学療法を受けている患者さんも多くなりました。大腸がんの化学療法は外来で行えるものも多く、副作用をコントロールしながら、がんあるいは治療と上手につき合っていくことが、一番の目標といえるでしょう。

  • 抗がん剤治療の副作用

    抗がん剤は、主にがん細胞の遺伝子や細胞の分裂増殖を抑えることにより、その主作用を発揮します。しかし同時に正常な細胞も傷つけてしまうことがあり、これを副作用と呼びます。疲労感や食欲低下や吐き気、または白血球減少などが多くの抗がん剤でみられます。使用される抗がん剤によって、特殊な副作用が出現することもあります。ほとんどの副作用は、抗がん剤の治療を延期するか中止することにより回復しますが、症状に応じてその症状を緩和するような対処を行います。

放射線治療には、1)手術が可能な場合での骨盤内からの再発の抑制、手術前の腫瘍サイズの縮小や肛門温存をはかることなどを目的とした手術に対する補助的な放射線治療 2)切除が困難な場合での骨盤内の腫瘍による痛みや出血などの症状の緩和や延命を目的とする緩和的な放射線治療があります。
  • 補助放射線治療

    切除が可能な直腸がんを対象とします。通常、高エネルギーX線を用いて、5~6週間かけて放射線を身体の外から照射します(外部照射)。化学療法の適応がある場合には、化学療法と併用して行われることが標準的です。手術中に腹部の中だけに放射線を照射する術中照射という方法を用いることもあります。我が国における専門施設では十分なリンパ節郭清により、骨盤内からの再発が少ないなど手術成績が欧米に比べ良好なことなどから、現在、我が国では補助放射線治療は欧米に比べ積極的に行われていません。

  • 緩和的放射線治療

    骨盤内の腫瘍による痛みや出血などの症状の緩和に放射線治療は効果的です。全身状態や症状の程度によって、2~4週間などの短期間で治療することもあります。また、骨転移による痛み、脳転移による神経症状などを改善する目的でも放射線治療は一般的に行われます。

  • 放射線治療の副作用

    放射線治療の副作用は、主には放射線が照射されている部位におこります。そのため治療している部位により副作用は異なります。また副作用には治療期間中のものと、治療が終了してから数ヶ月~数年後におこりうる副作用があります。治療期間中におこる副作用として、全身倦怠感、嘔気、嘔吐、食欲低下、下痢、肛門痛、頻尿、排尿時痛、皮膚炎、会陰部皮膚炎(粘膜炎)、白血球減少などの症状が出る可能性があります。以上の副作用の程度には個人差があり、ほとんど副作用の出ない人も強めに副作用が出る人もいます。症状が強い場合は症状を和らげる治療をしますが、通常、治療後2~4週で改善します。治療後数ヶ月してからおこりうる副作用として、出血や炎症など腸管や膀胱などに影響が出ることがあります。