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食道がんについて

食道癌は、一般的には治り難い癌の代表といわれていますが、近年治療法の進歩によって、飛躍的に治療成績は向上しています。従来このように言われていた背景には、手術が難しくて侵襲が大きいことによる手術成績の悪さ(特に一般病院では)、有効な抗癌剤がない、などの問題がありましたが、手術法の改良・新抗癌剤の登場によって改善されてきています。特徴として、早期食道癌の治癒率は非常に高い(治る可能性が高い)という反面、一度進行するとリンパ節に転移して、治癒率が低くなるということがあげられます。

食道癌とひとくちに言っても、全く再発せず完治する早期食道癌から、再発率の高い進行食道癌まで色々です。治療にあたっては、まず食道癌の進行具合を、各種検査によって調べなくてはなりません。それによって治療方針がかわってきます。癌の進行度を決めるために必要な情報として、

①癌の壁深達度(癌が食道のどのくらいの深さまできているのか)
②転移度(癌ができている部位から他の部位に飛び火していないか―リンパ行性転移(リンパ節)・血行性転移(肝臓・肺など
― が必要となります。

食道癌の特徴として、どの部位(占拠部位)にできても、食道全体に転移することがあるため、頚部から腹部までの全域を入念に調べなくてはいけません。

食道がんは

食道がん治療について

食道癌の治療は、①内視鏡治療、②手術、③化学療法、放射線療法、④食道ステント挿入術等があります。教室ではこれらすべての治療を行っており、あらゆる段階の食道癌患者さんに対応しています。特に手術に関しては、胸腔鏡というカメラを用いることで傷を最小限に抑える低侵襲手術を行っています。

食道癌の手術は、癌の転移の可能性が広範囲にわたることから、食道は首のところの頸部食道を残すのみで他の全部の食道を切除し、リンパ節は胸部、腹部上部、症例によっては頸部リンパ節まで切除しなければいけません。さらに、食道の代わりとなる食べ物が通る臓器が必要で、多くの場合、胃を細長く切って「胃管」を作成し、頸部まで持ち上げ、頸部食道とつなぎます。この手術を行うために、多くの施設では、右胸を開ける右開胸、開腹、頸部切開の3ヶ所の大きな創部で行っています。胃癌や大腸癌ならば、腹部の手術創だけで済みますが、食道癌の場合は、頸部、胸部、腹部の3ヶ所の手術を一度に行わなければならず、他の消化器癌と比較して非常に大きなストレスが患者さんに加わります。特に開胸手術は、肋骨と肋骨の間を大きく切開するため、術後呼吸機能が大きく低下し、術後数日にわたる人工呼吸器による管理や、集中治療室に1週間滞在するような術後管理が必要となる場合があります。さらに、一度何か合併症が起きれば命に係わる可能性があり、症例数の多い施設でなければ安全に手術を行うことが困難であるのが現状です。

このため、施設によっては進行食道癌に対して手術ではなく化学放射線療法を行うことで根治を目指すところも少なくありません。確かに食道癌は、比較的化学放射線療法の効果が高いといわれていますが、癌の根治性から考えると、手術に劣ると言わざるを得ません。

教室の食道癌治療の最大の特徴は、低侵襲で、合併症が少ない、胸腔鏡と腹腔鏡を用いた食道癌手術です。我々は1996年より手術侵襲(ダメージ)の軽減を目的に食道癌に対して胸腔内操作を日本の中で最初に完全鏡視下で行い、腹部操作にも腹腔鏡を用いた胸腔鏡腹腔鏡併用食道亜全摘術(VATS-E)を導入し、現在までに700例をこす症例数を経験しております(国内・外とも鏡視下手術ではトップの件数)。胸部操作は、5か所の穴(5ミリの穴が3つと12ミリの穴が2つ)だけで胸腔鏡下に行い、腹部操作は、5ミリの3か所の穴と、上腹部に7〜8㎝の横切開下で、腹腔鏡補助下に行います。癌の摘出手術ですので、我々としては当然手術の内容にこだわっておりますが、開胸開腹手術と同様かそれ以上に細かいレベルで食道切除、リンパ節切除などを行います。頸部は、他施設同様に切開創をおきます。手術時間は平均4.5-6時間で、症例数の多い施設の開胸開腹手術とほぼ同じか、それ以下の時間で終了致します。

しかし、腹腔鏡下手術とは言っても、食道を切除し広範にリンパ節を切除するといった食道癌手術としての内容は変わらないため、消化器の手術としては決して小さいものではありません。そのため、手術前から患者さんには協力して頂き、当科でお渡ししている食道癌のパンフレットを読んで、病状と治療の理解をし、術後のイメージトレーニングをしてもらいながら、術前から毎日の歩行トレーニングと、呼吸機能訓練をして、手術を受ける準備をして頂いております。この手術は、医療者側の努力半分と患者さん側の努力半分で成り立っているといっても過言ではありません。

胸腔鏡下手術と開胸手術の手術創の比較
2011年紹介元分布

手術療法(VATS-E)の実際

胸腔鏡下食道亜全摘術

術後経過・術後合併症

術後経過は手術だけではなく、術前からの患者さんの努力によってもかなり左右されます。通常は術直後に人工呼吸の管を抜き、集中治療室は1泊のみで退室します。手術翌日からは患者さんには頑張って歩行を開始していただき、呼吸器合併症の予防をしてもらっています。食事は術後約5日目から開始し、退院は術後9日〜2週間程度となります。

術後経過の比較

また、術後合併症は、食道癌術後に多いものとして、反回神経麻痺、肺炎、縫合不全がありますが、いずれも3 %で比較的少ないと考えます。特に縫合不全は、この4年間で0.7%(全国的には14ム27%)となっております。現在、肺炎をゼロにするのが我々の目標です。

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また、教室での食道癌手術の鏡視下率は100%(国内・外でトップ)です。5年生存率は、stage 0 100%、stageⅠ 96%、stageⅡ 84%、stageⅢ 50%、stageⅣa 20%、stageⅣb 0%で、多症例施設に劣るものではありません。

ステージ別生存率

化学療法

当科で行っている化学療法

フルオロウラシルと、シスプラチンまたはネダプラチンによる併用療法

化学療法は点滴でおこないます。外来化学療法ではなく、入院していただいて行われます。化学療法では、手術で取り除ききれない部位や放射線を照射できない部位にも薬剤が全身にいきわたり、抗腫瘍効果を示します。
手術前におこなう化学療法と、手術後におこなう化学療法があり、必要に応じて施行することになります。当科ではフルオオルラシル(5-FU)と、シスプラチン(ランダ)又はネダプラチン(アクプラ)の併用療法を施行しています。また、必要に応じてドセタキセルなども使用します。

以下に術前化学療法を行い手術する場合の治療スケジュールの一例をお示しします。

術前化学療法〜手術までの流れ

頻度が高く、患者さまご自身が自覚症状として感じる代表的な副作用は、食思不振、悪心、便秘です。昔の様に吐いて食べられない、髪の毛が抜けてしまうという事は殆どありません。また、白血球減少や血小板減少、低ナトリウム血症を認めることがあります。副作用に対しては、医師に加え病棟薬剤師や看護師と連携をとり、積極的に対症療法を行っていきます。

術後化学療法は有効か JCOG9204(日本の臨床試験)

StageIIA、IIB、III、IV食道癌患者を対象に、胸部食道癌治癒切除後の補助化学療法の効果を評価した試験があります。この試験では、術後補助化学療法として5-FU(フルオロウラシル)とCDDP(シスプラチン)の併用療法は、手術単独よりも再発防止に効果があることが示されました。
Ando N, et al. J Clin Oncol 21:4592-4596, 2003

術前化学療法は有効か JCOG9907(日本の臨床試験)

StageII、III食道癌患者を対象に、手術前に補助化学療法(5-FU+CDDP)を加えることが、術後補助化学療法より高い再発予防効果があるかを評価した試験があります。この試験は米国臨床腫瘍学会で2008年に発表があったばかりですが、術前化学療法の有効性が示されています。
Igaki H, et al. J Cllin Oncol 26:2008(abstr4510)

Meta-Analysis(複数の臨床試験を総合的に評価すると...)

多くの臨床試験では、Meta-Analysisを含め、術前化学療法の有効性を明確に示せずにいました。2007年に発表されたMeta-Analysisでは、これらの臨床試験が総合的に評価され、わずかながら術前化学療法の有効性が示されています。
Gebski V, et al. Lancet Oncol 8:226-234, 2007

放射線療法+化学療法 RTOG8501、JCOG9516など

根治的治療として、化学療法と放射線療法を同時に行うことで効果があることがわかっています。これは、手術に適さない場合や食道を温存する場合に用いられることがあります。

当科のチーム医療について

当科では1996年〜2014年までに、国内で最多となる700例以上の手術を施行してまいりました。年次推移は前述しましたが、年々手術件数は増加傾向にあります。我々は、食道癌手術としての質の維持、向上は当然のことながら、いかに患者さんが術後に安心した元通りの生活を過ごせるかを目標としています。

手術の質の維持として、当科では、国内でも20人にも満たない(2013年現在)と言われている食道悪性腫瘍での日本内視鏡外科学会技術認定医が3人在籍しております。そのため、難しいと言われている、同日に同時に胸腔鏡下食道癌手術の施行が可能であり、日常施行しております。しかしながら、前述した合併症を減らし、患者さんが元通りの生活に戻って頂くためには、手術技術だけでなく、いかに術前から術後を含めた管理を出来るかという事が重要です。そのため、当科では9年前よりチーム医療に力を注いできました。当科ではチーム医療として入院後は6〜7人の医師がグループで診療にあたります。更に毎朝、医師・看護師・薬剤師やソーシャルワーカーと共にカンファレンスを行い、患者さんの情報共有を行いチーム医療を実践しております。すなわち、患者さんはどの医師に自分の事を聞いても、状況がわかる仕組みが理想です。また、患者さんもチームの一員であるという事も認識して欲しいと思います。
また、入院後に院内での歯科検診を行い、手術までの間の口腔ケア指導、虫歯があれば虫歯の治療も徹底して行います。虫歯の菌が、術後に気管に入って生じる肺炎等を防ぐ意味合いもあります。
この結果、難しいと言われる食道癌手術の質の向上だけではなく、術前・術後を含めたチーム医療の充実により、全国でもトップレベルの合併症の低さ、良好な治療成績をあげることが出来ました。
患者さんは、術後に元の生活に早く復帰できるように、我々のチームの一員となって一丸となって全力で頑張りましょう。

当科のチーム医療について

当科では他院で開胸手術を提案された方、放射線治療後に再発してきた方等様々な方がいらしております。遠慮なく、当科 村上雅彦外来(毎週木曜日・金曜日)か、大塚耕司外来(毎週木曜日)にお越し下さい。また、遠方でなかなかいらっしゃる事が出来ない方も、ホームページ上でのご相談も受け付けております。画像が無ければしっかりとした方針はお答え出来ませんが、大体の流れはお答え出来るかと思います。その後に、改めて画像と紹介状をお持ちの上、お越しいただければと思います。
または平日に外科外来に受診して頂ければ、当科教室員が対応させて頂きます。その後、手術中など食道癌担当スタッフが対応出来ない場合でも、早急に連絡が繋がるシステムになっております。早期癌に対する内視鏡治療から進行食道癌、超高齢者食道癌に至るまであらゆる状況に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

食道癌に対するお問い合わせは

医療連携室 03-3784-8400か 外科外来 03-3784-8557 (消化器外科 受診希望とお伝えください)に、ご連絡頂くか、食道癌に対するメールでしたら kyousika@hotmail.com までご連絡ください(なお、返信に数日かかる場合もございますが、ご了承ください)。