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胃がんについて

胃がんの治療について

胃癌の診断と治療におけるわが国の医療レベルは極めて高く、これまで世界をリードしてきたことは明らかな事実です。20年前には癌死亡の1位は胃癌でしたが、現在男性は肺癌、女性は大腸癌になっています。これはわが国における胃癌検診を含めた診断と治療の進歩による予後改善が大きく関与しているものと考えられています。さらには、ヘリコバクター・ピロリ菌が胃癌の発生に関与することが判明し、ピロリ菌の除菌治療が積極的に行われるようになり、最近では慢性胃炎(ピロリ関連胃炎)に対してもピロリ菌の除菌治療が保険適応となりました。
また、早期胃癌に対しては内視鏡での治療(内視鏡的粘膜下層切開剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection : ESD)が積極的に行われるようになり、今後、胃癌に対する手術は減少していく可能性があります。
しかし、進行癌や内視鏡治療の適応外となる場合は手術が必要となります。そこで患者さんに負担の少ない治療として腹腔鏡手術が行われるようになりました。しかし、実際には施設によって治療方針にかなり差があることも分かっていました。そこで日本胃癌学会ではこの問題を解決するために、胃癌に対する標準的な治療を「胃癌治療ガイドライン」として示し、さらに患者さんのための「胃がん治療ガイドラインの解説」も作られ、医療関係者だけでなく患者さんやその家族の方にも胃癌の治療について理解を深めてもらうことができるように工夫されています。詳細はを参照していただくとわかりやすく説明してあります。

胃がんに対する手術

手術方法はおおまかに2通りあります。

いずれも胃癌に対してリンパ節を含めて胃を切除し、食事の通り道を作るために消化管をつなぐ再建(さいけん)を行います。腹腔鏡手術は傷が小さく従来の開腹手術に比べ手術後の痛みが少ない、早期の退院が可能で社会復帰が早いという利点があります。
ただし、現時点では手術の難しさがあり、まだ研究段階の部分もあること、どの進行度まで腹腔鏡手術を行ってよいのかまだ証明されていませんが、近年多くの施設で腹腔鏡手術が取り入れられるようになりました。

胃がんに対する手術

胃がんの治療について

教室における胃癌の治療方針も基本的には先ほど述べた「胃がん治療ガイドライン」に従って決定しています。教室では1999年から腹腔鏡手術を早期胃癌の患者さんに導入しています。導入当初は再建する際に小開腹を追加する腹腔鏡補助下手術(Laparoscopy-Assisted Gastrectomy)を行っていましたが、2005年からは小開腹を追加せず再建も含めてすべてを腹腔鏡で行う完全腹腔鏡下手術(Laparoscopic Gastrectomy)を標準として行っています。両者の違いは、後述しますが、腹腔鏡下手術では5箇所のうちの1カ所(へそ)の傷を約3cm延長して胃を摘出するため傷は最小限になります。

また教室では、手技の安定・技術の向上に伴い、2005年から進行胃癌に対しても腹腔鏡下手術を積極的に行っています。手術前の進行度診断で深達度SS、リンパ節転移N1(胃癌取扱い規約第13版)までを腹腔鏡下手術の適応としていますが、明らかな漿膜浸潤(SE)、広範なリンパ節転移(BulkyN2)、播種性病変を認めた場合は速やかに開腹手術へ移行しています。
現在では胃癌患者さん全体の約80%以上(年間約80例)に対して腹腔鏡手術を行っています(図1)。
通常の開腹手術と比べて手術時間は短縮しかつ出血量は減少しましたが、合併症の頻度、治療成績は同等の結果が得られ、入院期間(平均12日間)は以前と比べて短縮されました。

図1. 教室における腹腔鏡下胃がん手術術式の変遷

また、腹腔鏡手術には必ず日本内視鏡外科学会技術認定医が携わり、安全で確実な手術を行っています。しかし、患者さんの安全性と根治性(確実に癌を治すこと)を最優先とした手術を行うのが我々の目的であって、術式や傷の大きさは最優先事項ではないことを十分理解していただきたいと思います。

手術の実際

現在教室で行っている胃癌に対する腹腔鏡手術の具体的な方法を述べます。

腹腔鏡下幽門側胃切除術

腹腔鏡下胃全摘術

腹腔鏡下噴門側胃切除術

腹腔鏡下胃空腸バイパス術

どの術式を選択するかは癌の部位あるいは進行度によって決定されます。腹腔鏡手術の場合、通常術式を問わず傷は5~12mmの5ヶ所で行います。手術は開腹手術の場合と同様にリンパ節転移の可能性がある胃癌に対して胃と一緒にリンパ節をとるのが原則となります。その後、幽門側胃切除の場合は残った胃と十二指腸もしくは小腸、胃全摘術の場合は食道と小腸をお腹の中でつなぎます。
最後に切除した胃を取り出すために、へその傷を縦に3cmほど追加して切り、そこからリンパ節を含めて胃を取り出します。合計手術時間は患者さんの体型、リンパ節をとる度合いによって異なりますが、胃切除術の場合で約3時間、胃全摘術の場合で約4時間、胃空腸バイパス手術は約1時間で手術を終えることが出来ます。

傷の特徴

一番大きな傷は3cmほどのへその傷ですが、個人差はありますが、写真一番右のように手術後約半年でその傷はほとんど目立たなくなります。これは、腹腔鏡下胆のう摘出術の傷とほとんど変わりません。写真一番左の開腹手術(みぞおち~へそまでの15~20cmの傷)と比べて明らかに小さく、術後の痛みも少なく、さらに癒着(ゆちゃく)などによる腸閉塞の発生も非常に少なくなりました。

傷の特徴

高齢者に対する適応

腹腔鏡手術の1つの欠点として、慢性呼吸器疾患(肺気腫やぜん息など)をもつ患者さんでは手術中、二酸化炭素がたまりやすくなることがあり、術後に呼吸不全を併発するリスクがあることです。しかし、実際には傷が小さいこと、手術自体の全身への影響が低いことなどの利点が多く、そのため、高齢者でも術後の合併症が少なく行える手術として積極的に行っています。

胃癌の化学療法について

胃癌の化学療法においては、消化器内科や化学療法を専門に扱う腫瘍内科と連携をとりながら、患者さんにとって最も適した抗癌剤治療を行っていきます。多くは内服の抗癌剤(S-1)を取り入れた化学療法が行われます。

胃癌の治療は手術療法が中心となりますが、手術時の進行度(ステージ)が進んでいる患者さんほど再発のリスクが高くなります。そのため、手術後に化学療法を合わせて行われることがあり、これを術後補助化学療法と言います。特にステージがⅡ、Ⅲの患者さんには、術後およそ1ヶ月して全身状態が安定した時期から再発予防(補助)のために化学療法(抗癌剤)の治療を外来で行っています。術後補助化学療法は、ここ数年で大きく改善されてきています。

一方、肝臓や肺などには転移が無いが、腫瘍が大きい、大きなリンパ節転移があるなどの場合は、手術前に化学療法を先行して行うことがあります。これを術前化学療法と言います。腫瘍やリンパ節が小さくなってから手術を行うこととなりますが、その場合でも教室では積極的に腹腔鏡手術を行い良好な治療成績を収めています。