その他の疾患
鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)
「鼠径(そけい)ヘルニア」とは腹壁(おなかの壁)がなんらかの理由で弱くなり、鼠径(そけい)部(太ももの付け根)の筋肉や筋膜の隙間から、本来ならお腹の中にある腹膜や腸の一部が脱出する病気です。昔から一般に「脱腸(だっちょう)」と呼ばれています。
ちょうどタイヤパンクのように、弱くなった部分から中身がとび出してしまう状態と似ています。 ヘルニアは通常、腹膜に包まれた形(この場合の腹膜の袋をヘルニアのうと呼びます)で腸や内臓が皮膚の下に脱出します。ヘルニアになると「とび出した腸がしこりのように膨れる」という、わかりやすい体表の変化がみられます。 特に、お腹に力を入れ腹圧が上がる時に脱出しやすく、横になると戻ることがあります。
正常
脱出した腸
男性の外鼠径ヘルニア
主な症状として、脱出した場所が膨れる以外にも痛みや違和感があります。
これらは進行すると日常生活に支障をきたすほど強くなることもあります。
場合によっては、とび出した腸が筋肉で締め付けられてもとに戻れなくなる「嵌頓(かんとん)」という症状を起こします。嵌頓を放置すると「腸閉塞」を起こし、病状が進行するととび出した腸が「壊死(えし=腐ってしまう)」することもあり、緊急の処置が必要になりますのでなるべく早く消化器外科を受診するように心がけてください。
ヘルニアは自然に治癒することはなく、手術が唯一の治療法となります。
当科では体への侵襲が少ない腹腔鏡手術を標準療法としており早期退院(2−4日の入院期間)が可能です。少しでも気になることがあれば、お気軽に担当医にお尋ねください。
嵌頓していない状態 腸は簡単にお腹の中にもどる
嵌頓している状態
腸はお腹の中に戻らない
腸閉塞、腸壊死の原因になる
用手環納(かんのう)法 嵌頓が軽度、早期ならばこの方法で脱出腸管をお腹の中に整腸できる
急性虫垂炎(いわゆる盲腸)
緊急手術を必要とする頻度も多い疾患の一つです。よく「盲腸で手術を受けた」と表現される病気の正式な名称が急性虫垂炎になります。お腹の右下あたりにある大腸が始まる部分を盲腸といいますがその先から出る細い管状の突起した部分を虫垂といいます。この虫垂に細菌が感染して炎症が起きた状態を急性虫垂炎といいます。
主な症状として、腹痛・吐き気があります。初期にみぞおちが痛くなり時間経過と共に右下腹部に痛みが移動するのが典型例とされています。
抗生物質の点滴などで治療可能な場合もありますが、炎症の程度によっては緊急手術が必要となる場合もあります。
当院では腹腔鏡手術がほとんどです。虫垂炎は初期では診断がはっきりしないことがあり症状が改善しない場合は時間外であっても我慢せずに受診してください。