胃・十二指腸疾患
胃がんとは
現況
がんによる死亡は1981年から死亡原因の第1位であり、最近では総死亡の約3割を占めています。その中で胃がんの年齢調整死亡率は長年第1位でしたが、年々低下傾向を示し現在は肺がん、大腸がんに次いでがんによる死亡数の第3位となっています。これはわが国における胃がん検診を含めた診断学、治療学の進歩による予後改善が大きく関与しているものと考えられています。
日本での胃がんの治療について
日本における胃がんの治療成績は世界の中でもトップレベルにあると言われています。しかし、実際には施設によって治療方針にかなり差があることも分かっていました。そこで、日本胃がん学会では国内で初めてがんに対する標準的な治療を「胃癌治療ガイドライン」(2001年)として示すことでこの問題を解決することにしました。さらに患者さんのための「胃癌治療ガイドラインの解説」も作られ、医療関係者だけでなく患者さんやその家族の方にも胃がんの治療について理解を深めてもらうことができるように工夫されています。
教室における胃がんの治療方針は基本的には「胃癌治療ガイドライン」に従って決定しています。特に早い段階の胃がんの患者さんに対しては体に負担の少ない手術として腹腔鏡下(ふくくうきょうか)手術を1999年より取り入れ、手技の安定化に伴って進行胃がんに対しても適応を拡大して積極的に行い、2010年には腹腔鏡手術の件数が開腹手術を超えました。現在では全体の90%近くを腹腔鏡手術で行っており、通常の開腹手術と比べても同等の治療成績が得られ教室における標準的治療になっています。また、2018年より保険適応となったロボット支援下手術も2019年より導入し開始しました。今後さらなる精度の高い低侵襲手術として症例数が増加するものと考えています。
教室における過去10年間の胃がん手術件数と腹腔鏡下手術の占める割合
胃がん手術全体に占める腹腔鏡下手術の割合は年々増加し、現在は80%以上の症例で腹腔鏡下手術を行っています。
腹腔鏡下手術
手術後1ヶ月後の傷
腹腔鏡手術
従来の開腹手術
ロボット支援下手術
参考文献・ホームページ
- 日本胃癌学会ホームページ
- 胃癌取り扱い規約(2017年10月改訂[第15版]日本胃癌学会編(金原出版)
- 胃癌治療ガイドライン(2018年1月改訂[第5版])日本胃癌学会編(金原出版)
- 日本ロボット外科学会ホームページ(da Vinciの紹介)
- 日本消化器外科学会ホームページ(胃の病気、胃がん)
- 全国がんセンター協議会(全がん協生存率調査)
- 小冊子「胃を切った方の快適な食事生活のために」胃外科・術後障害研究会編